車の未来は電動化へと向かっている。しかし、それはハードとしての車の電動化に留まらない。新エネルギー車(以下「NEV」表記)の登場は、一見したところ、従来的な内燃機関による動力システムから、電動化技術への転換として人々の目に映るが、実際のところは、それだけに留まらず、人々の生活における車の役割に、より重大な変化をもたらすものと言える。すなわち、車は「移動の道具」から「人々の移動の自由を実現するパートナー」としての存在へと進化しようとしているのである。

そして、この変化が、ことさら如実に表れている国・地域は、中国をおいて他にはないだろう。中国の消費者は瞬く間に、伝統的なステータス志向の車選びをする消費者から、デジタルテクノロジーの先行受容層のような消費者へと変貌を遂げた。こうした消費者の心を掴むべく、伝統的なメーカーから後発新興メーカー、さらには、テクノロジー系企業からの新規参入メーカーに至るまで、市場には数多のプレーヤーがひしめき合っている。

中国の電動車市場、とりわけバッテリー電気自動車(以下「BEV」表記)市場は、すでに普及に向けたティッピングポイントを超えたと言ってよい。政府の強力な政策主導によって刺激された消費者の需要マインドは、今後この市場の成長をさらに加速させるであろう。世界最大のこのBEV市場が、巨大な中国自動車市場の一つのメインストリームとなりつつある今、そこでの継続的な成功は、全ての市場参入者の存亡を握るカギとなる。

本白書は、私たちが2022年を通じて、四半期ごとに発表を予定しているシリーズの第一弾となるもので、競争の激しいBEV市場でのチャンスと課題を明らかにし、ステークホルダーの皆様が、BEVの潜在的顧客のニーズに対して、適切なマーケティング戦略を採れるよう、その道筋を示すことを目指したものである。